親から引き継いだ田舎のこの小さな不動産屋に、いかにも今時だな～と思えるお客さんがやってきました。若いご夫婦なのですが、普通であれば第一条件として言ってくる、部屋の向きや間取りのことは後回しで、スマホが鍵になるマンションを探しているというのです。

そんなマンションがあるなんて、恥ずかしながら知りませんでした。正直にそんな物件があることを知らなかったとお客さんに話、ご夫婦と私の3人でネットで調べてみました。確かにそんな鍵が存在するようです。鍵と言ってもそこに鍵穴はなく、もし自分が泥棒だったら、どこから攻めていいのか全くわからず途方にくれてしまいそうなドアです。そのドアノブの部分にスマートフォンをあてると、同期して鍵を開け閉めできるとのこと。スマートフォンが開発されたことも私のような古い人間には理解できない凄さなのに、それを利用したこれまた凄いものが世の中にはあるのですね。

スマホが鍵になるマンションという条件で検索してみましたが、私の扱えるシステムではデーターが出てきませんでした。そのご夫婦は諦めて帰って行かれましたが、残念に思うより少しほっとしてしまいました。そんな物件が見つかったとしても、契約など細かなことで、なんだか面倒なことに、なりそうでしたので。

防犯性を考えると、鍵穴のないドアはいいかもしれません。ピッキングされたりこじ開けられたりする心配もなさそうです。しかしスマートフォンの鍵は、よく知りませんが目に見えない、電波か何かで開錠するのでしょう。形あるものはいつか壊れる。しかし形のあるものは、修理などもできるのです。これが形のない、目に見えない鍵だとしたら、ひとたび鍵のトラブルが起こった際、管理会社としての私はきっとお手上げになります。まあこんな田舎にそんな物件はあるはずないと思うのですが、あのご夫婦はなぜ、この小さな田舎の不動産屋を訪れたのでしょうか。