うちの工場で働いていた男が急に行方不明になり、後になってわずかだが、会社の金を持ちだしていたり、あちこちに借金をしていたということがわかった。前の職場をクビになり困っていたところを助けてやったのに、恩知らずな奴だ。だが、そんな奴だとわかっていなかったと言ったら嘘になる。そんな奴だと承知の上で、人手不足のこの業界で、使っていただけのことだ。何かどうしようもない理由で、わずかばかりの金を手にして逃げたのだ。損害は少なくて良かった。
厄介なのは、奴が会社の鍵を返さないまま居なくなったことだ。工場と事務所と車の鍵。どの面下げてもう戻ってくるとは思えないが、その鍵が誰か他の人間に渡ることも考えられるし、奴本人が空き巣に入りに来る恐れもある。やはりここは、全ての鍵の交換をしなければならないだろう。しかし、3箇所となると、鍵の交換費用もバカにならない。以前、自宅の玄関の鍵を少し良いものに交換してもらった時でも、2万以上かかったはずだ。
業者に頼まなくてもカギは交換できるのだろうか?従業員の中で、その手の話が詳しそうな数人に聞いてみたが、できないことはないが、ネットなどを使って格安の業者を探した方が確実だという。また、鍵の交換までしなくても、補助錠をつけるという手もあるという。従業員の中で、一度空き巣被害にあったことがある者が居て、その彼の家は、今では鍵が3つ。3つの鍵のうち1つは、ドアの上部に特殊な装置を取り付ける、リモコン式の鍵がついているのだという。その装置が外から見ると防犯カメラか何かのようで、ダブルの防犯性があると彼は笑っていた。
うちの工場は常に人が出入りしているから、今まであまり防犯に気を配ったことはなかったが、これをいい機会と捉え、社内の鍵や防犯について、改めて見直してみるよい時期かもしれない。